左:スールバハール、右:シタール
このスールバハールは特注です。自分の身長(179cm)で可能な限り大きいのを作ってほしいとリクエストして、
1992年頃に、数ヶ月をかけてインド・ベナレスの楽器職人さんに作ってもらいました。(全長155cm)
スールバハールはインドでも奏者が非常に少なく、めったにみることはできませんが、
現存するスールバハールとしては、最大級の大きさであることは間違い無さそうです。
弦も超太くて、倍音を含んだ重低音がうねります。
左手で押さえた弦を引き下げ、唱っていくことはシタールと同様ですが、
スールバハールの場合、音程を1フレットで1オクターブ上げる事ができます。
音色は古楽器ビーナ ( Veena ) 、わけても ルドラビーナにかなり近く、スールバハールの基本音、ピッチの設定はルドラビーナとほぼ同じですが、
スールバハールはルドラビーナには無い「共鳴弦」が12本あります。
古楽器の中では比較的新しいスールバハールですが、
ルドラビーナの音色の深さと、シタールが持つ共鳴弦の華やかさを併せ持っていると言えます。
(ちなみに、Veena ビーナ には ルドラビーナ の他に、スライド奏法で奏でられる ビィジットラビーナ 、そして南インドには サラスヮティービーナ があります。)
スールバハールは、ドゥルパッドと呼ばれる「北インド古楽」のスタイルや、シタールと同様のスタイルで演奏します。
伝統的な旋律「ラーガ」の世界を即興的に描いていきますが、シタールなどのキャールスタイルからみて、 より瞑想的な世界といえるでしょう。
Alapと呼ばれる前半と、ジョールと呼ばれるリズムを伴った表現の後、打楽器タブラの前身である パカーワジ と合奏しますが、
キャールスタイルでのタブラの伴奏にあるような、「テカ」と呼ばれるリズムパターンを重視した伴奏にとどまる事なく、メロディーとリズムが同時進行的に描かれて行ったりします。
スールバハールは、 世界的にみても、奏者は非常に少ないです。
「持ち運び」は壊れやすく、非常に繊細にて、なにかとたいへんですが、
演奏することは、困難極まります。かなり鍛えないとすぐに指先が痛みますし、長時間姿勢を保つ事も困難です。
しかし、その音色ときたら、「ありえない、。」なんとも深みのある世界です。
2012年、静岡県伊豆「ダンスオブシバ」にて
パカーワジ:金子哲也、スールバハール:南沢靖浩、タンプーラ:yuki